アスベストに関する話題(1)
昨年来アスベストの問題が大変な公害問題としてクローズアップされてきています。数回にわ
たってアスベスト問題に関する話題を取り上げます。
まず、アスベストに関するミニ知識
アスベスト(石綿)とは
天然に産する繊維状珪酸鉱物である。耐熱、耐磨耗、断熱、腐食に
強い性質があり近年まで他の物質でアスベストに匹敵するものがな
かった。
種類は
クリソタイル(温石綿、白石綿)、アモサイト(茶石綿)、クロシドライト(青石綿)が実用的に使
用されている。
その他、アンソフィライト、トレモライト、アクチノライトがあり、合計六種類である。
使用制限
有害性の強いアモサイト、クロシドライトは平成7年に使用禁止となった。また他のアスベス
ト類についても平成16年10月から、ごく一部を除き全面的に輸入、製造、使用が禁止とな
った。
生産量
世界規模では現在でもピーク時の20%は生産しており、その量は年間約100万トン。主と
して開発途上国向けである。
日本の輸入量は現在ピーク時の10%以下、年間2万トン以下が輸入されている。
毒性
1970年代初頭に発がん性が明らかになる。吸入してから20~50年後に癌(特に胸膜中
皮腫)を発症することから「静かな時限爆弾」として恐れられるようになった。
参考文献
(株)住重環境分析センター、黒豆氏、提供記事
環境衛生工学研究、Vol20 No.3、アスベスト測定に対する現状と課題、神山宣彦
アスベストの話題(2)
分析方法
気中濃度測定方法
1、位相差顕微鏡法
2、位相差顕微鏡による分散染色係数方法
3、分析電子顕微鏡による濃度測定方法
建材等のアスベスト含有率の測定方法
1、X線回折分析法
2、位相差顕微鏡による分散染色分析法
3、分析電子顕微鏡(透過型、走査型)法
等がある。いずれも1、2は定性分析、3は定量分析とされてきたが、平成18年3月に制定さ
れた「建材製品中のアスベスト含有率測定方法」では1と2を組み合わせる方法で定性、定
量分析を行うようになっている。
提携会社(株)住重環境分析センターでも分析を承っている。
(この稿1部修正 7/27)
参考文献
(株)住重環境分析センター、黒豆氏、提供記事
環境衛生工学研究、Vol20 No.3、アスベスト測定に対する現状と課題、神山宣彦
アスベストに関する話題(3)
アスベスト廃棄物の処分方法
アスベスト廃棄物の処分は、これまでは管理型処分場への埋立て処分が中心であったが、
アスベスト問題がクローズアップされる中で処分を忌避する動きが広まり、各地で受入れ拒
否や料金の高騰が生じるようになった。
無害化方法としてはシャフト炉や表面熔融炉などの試験結果から1500度程度の高温熔融
するとアスベスト特有の結晶構造がくずれて無害化することが確認されている。
環境省では実証試験の結果等を踏まえ「無害化処理認定制度」を創設し、本年8月にも施
行する予定と言われている。
以下の文献を引用しました
環境衛生工学研究、Vol20 No.3、アスベスト廃棄物対策について、吉田秀人
アスベストに関する話題(4)
昨年来日本国内でも深刻な社会問題となっているアスベストの危険性については私自身も
認識が薄かったということを正直に告白しておきます。
もちろんアスベストがある種の癌を誘発する可能性があるということ、したがってその製造や
使用が制限されていることは知っていました。しかし組成が安定な無機物という思い込みが、
よほど長期に、大量に吸引したような場合だろうと思いこんだこと、自分の身近にそのような
危険が存在しなかったことで真剣に勉強しませんでした。
1980年代に米国で数万の死者を出し、深刻な社会問題になっていたことを知っておれば、
認識は違っていたと思います。環境保全の専門家としては不勉強のそしりを免れません。
さすがに関係省庁はそのような情報を得ており、平成3年には「飛散性アスベスト廃棄物を
特別管理産業廃棄物に指定」したり、平成5年には「廃石綿等処理マニュアル」を策定し、
平成7年にはアスベストのうち有害性の高いアモサイト、クロシドライトについては使用禁止
にするなどの対策は講じてきてはいました。
しかし他のアスベスト製品については平成16年になってやっと全面的に輸入、製造、使用
を禁止に踏み切るなど、米国から得ていたであろう情報の深刻さ、その後の影響の深刻さ
を考えると、政府の対応も大いに緩慢であったといわざるを得ません。
そんな中、昨年夏(株)クボタが従業員被害者のみならず周辺住民の被害者にも補償をす
ると発表して世間を驚かせました。遅すぎた決断、業界を出し抜いて一人良い子になって
る等の批判はあるにせよ、更に被害を広げないため、また被害者を長期にわたって放置し
ないためには、やはり英断であったと思います。従来は裁判沙汰になるまで放置し、なって
も因果関係で争うのが、この種の公害問題の常でしたから、そんな悪しき前例を破った大
英断だったと思います。
それにしても米国での深刻な事態の前例がありながら、このような事態を防げなかった業
界、国、我々環境問題専門家は一様に猛省すべきだと思います。
以上、文責 出納正彬
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