メタン発酵(嫌気性処理)・管理の要点、ポイント、コツ等(PAGE‐4)

 

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  7、UASB、EGSBの要点、ポイント

   7-1、グラニュール形成のメカニズム、グラニュール型メタン菌の利点。


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7、UASB、EGSBの要点、ポイント

 UASB(Upflow Anaerobic Sludge Bed)法は1970年代の後半にオランダ、ワーゲ
ニンゲン大学のレッチンガー教授たちのグループで開発され、1980年代の後半に日
本に紹介されました。これはメタン発酵(嫌気性処理)における大変なブレークスルー
になりました


 グラニュール型のメタン菌は処理性、安定性に優れ、それまでほとんど適用外だった
排水にまでメ
タン発酵が適用されるようになりました。

最近では多くのビール工場、焼酎工場等、濃厚で大量の排水を排出する工場で、
このタイプのメタン発酵(嫌気処理)が採用されています。

ただ、一方でいろいろのトラブルについてコンサルティングの依頼を受けるのもこのタ
イプのメタン発酵についてです。能力は高いが難しさも秘めたメタン発酵(嫌気性処理)
方式とは言えます。

 それにしてもメタン菌がなぜあのようなグラニュールの形になるのか?最初はとても
不思議でした。いや、今でも不思議な気がします。レッチンガー教授たちにしても、固
定床型のメタン発酵槽の研究をしているときにメタン菌がグラニュール化しているのを
偶然発見したと聞いています。もちろんレッチンガー教授とその後継者たちはメタン菌
がグラニュールになるメカニズム、処理性、安定性に優れていることの理由等には仮
説をたて、精力的に研究をしてきました。今でもグラニュール生成のメカニズムについ

ては諸説ありますが、私はレッチンガー教授達の説を信じています。

 

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7-1、グラニュール形成のメカニズム、グラニュール型
          メタン菌の利点。


 グラニュール形成にはメタン菌の中でもMethanosaeta(旧学術名Methnothrix) が重
要な役割を担っていると言われています。このMethanosaetaは糸状に増殖し、付着

やすい性質(対外合成されるポリペプチドが糊の役割を果たしている)を持っていると
言われています。この形状と性質をもったMethanosaetaが、上昇液流と発生ガスによ
り適度の流動を与えられると、糸玉を形成します。この糸玉がグラニュールです。ただ
しこのグラニュールはMethanosaetaだけで構成されるのではなく、Methanosarcina
等他
のメタン菌を巻き込んだ形で形成されます。(この現象をaggregationと呼ぶことも
ありま
す)。グラニュールは通常、直径0.55mmφぐらいのゴマ粒状で灰色、茶色、黒
色など
の色をしています。

 このMethanosaetaは酢酸だけを唯一の基質とする酢酸分解能がきわめて高いメタ
ン菌です。グラニュールはMethanosaetaが中心に構成されていることから、メタン発酵
の最終段階であり、反応の律速ともなっている酢酸からのメタン生成能が高く、全体と
しても高負荷で安定な運転が可能になっているものと推定されています。

 Methanosaetaを主たる構成要素とするグラニュールは、また種々のメタン菌、通性
嫌気性菌がアグリゲート(集合)して至近距離に緊密に共生しているので、菌叢の協
業作業が有利に働き(例えば、プロピオン酸分解の結果生じるH2 100mg/l以上で
プロピオン酸の分解を阻害しますが、隣接する他のメタン菌によってすみやかにメタン
化されれば、その阻害は生じない、等です。)このことも系の安定化に大きく役立って
いると言われています。

 ただ、通常のメタン発酵ではこのMethanosaetaは極めて劣勢で、Methanosarcina
等、他のメタン菌が主流です。しかしグラニュールを形成させるためにはこの
Methanosaeta
を優勢にしなければなりません。そのために2つの条件を満たす必要が
あります。

 1つはメタン発酵の前に酸生成槽で有機物の一部を酢酸にまで分解して、メタン菌
への基質を酢酸リッチの状態にしておきます。CODcr換算で約2030%を有機酸化
しておくのが好ましいとされています。

 2つ目はメタン発酵槽の中の有機酸(VFA)濃度を50mg/l以下に管理することです。
Methanosaeta
は酢酸濃度が50mg/l以下では、Methanosarcinaより比増殖速度が勝
るからです。管理値としては300mg/l以下とされることが多いですが、望ましくは
50mg/lであることを覚えておいてください。(短期間50mg/lをこえても、グラニュール
が崩壊するということではありませんが、管理値以下でも長期に50mg/lを超えている
と、グラニュールは柔らかく崩れやすくなります。)

 

      増殖曲線2.jpg

      

   UASBはグラニュール型メタン発酵と言いましたが、実際にはグラニュールベッドの
上層には非凝集性のメタン菌層が存在するのが普通です。この層はグラニュール化
する前のメタン菌の補充層であると同時に、メタン発酵の仕上げ段階を担う層として積
極的に評価しています。


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