排水中の有機物濃度を表す指標としてBOD(生物化学的酸素要求量)とCOD(化学的酸素要求量)
があるのは御存じのとおりです。
BODは排水中の有機物がどれだけ河川の酸素を消費するかを示す指標として、考案された
指標です。実際には適度に希釈した排水に河川水を混ぜ(河川中の好気性微生物を植えつけるため)
20℃で暗所に5日間放置して、その間に減少する酸素の濃度に希釈倍率を掛けて算出します。
有機物の個々の濃度を計ることは容易なことではありませんので、どれだけ河川の酸素を消費
するかで、排水の汚染強度を評価する方法です。バイオアッセイとも言い、非常に珍しい分析
方法でありまが、ある意味非常に優れた排水の指標と言えます。
ただ大きな問題点は測定に5日間を要することです。
これでは、現場の排水処理設備を管理するには適しません。
これに対しCODは廃水中の有機物が、酸化力のある化学物質によって分解されるとき化学物質中
の酸素がどれだけ消費されるかで有機物の濃度を表す指標です。
酸化性の化学物質には重クロム酸カリ、または過マンガン酸カリが使われます。
夫々、重クロム酸カリCOD(CODcr)、過マンガン酸カリCOD(CODmn) と呼ばれています。
世界的にはCODと言えば重クロム酸カリCOD(CODcr)を言います。
日本では過マンガン酸カリCOD(CODmn)が法律で規定されたCODですが、世界的には
珍しいケースです。
なぜ日本では過マンガン酸カリCOD(CODmn)が標準のCODに定められたのでしょう?
理由にはいくつかあるようですが、一番は過マンガン酸カリの酸化力が比較的弱く、下水等の
生活排水ではCODmnがBODに近い数値を示すからだったと思われます。
ともあれ、CODはいずれの方法でも30分~2時間で測定できますので、どちらの工場の
排水処理設備でも、管理はCODで行われているのが普通です。
ただ、CODにも別の問題があります。
上述したように、日本でCODは過マンガン酸カリCODが標準ですから、どこの現場でも
過マンガン酸カリCODで管理されているのが普通です。
ところが、過マンガン酸カリは酸化力が低く、必ずしも有機物を完全分解するのでありません。
有機物によってはほとんど検出できないものがあります。例えばアルコール類や有機酸は検出率
が低いと言われています
下表は、報告されているデータの1例です
化合物名 |
理論的酸素要求量(ThOD)※2 [gO/g] |
ThODに対する割合 [%] | ||
CODCr |
CODmn |
BOD | ||
酢酸 |
1.070 |
95 |
7 |
82 |
プロピオン酸 |
1.510 |
97 |
8 |
24 |
メタノール |
1.500 |
95 |
51~80 |
27 |
グルコース |
1.070 |
98 |
57 |
59 |
セルロース |
1.185 |
92 |
0 |
7 |
グリシン |
0.639 |
100 |
3 |
15 |
※1 出典:山田ら(1973) 水処理技術, 14, 1229-1251.
※2 理論的酸素要求量:各化合物が完全に酸化される反応を想定した理論的な酸素消費。
従って、一般の工場の排水処理設備の管理指標としては適当であるとも言えないのです。
排水のCODmnを基に排水処理設備の負荷管理をしていると往々にして実際の有機物負荷を
示していないことがあります。実際の有機物負荷より過小値を示すことが多いので危険側の情報
を与えていることが多いのです。
このことを頭に入れて、COD値を見る必要があるわけです。
特に食品工場、飲料工場の排水は、アルコール類や有機酸が中心の排水が多いわけですから、その点の配慮が肝要です。
出来れば、排水処理設備の管理指標は、有機物をほぼ完全酸化できるCODcr(現場管理用
としてはHach社の簡易分析法で十分)に変えていただくか、 今頃であれば計測器が要りますが
TOC(Total Organic Carbon)を測定していただけば、判断を間違うことは少なくなると思います。
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